King’s College London 緩和ケア修士課程 2018年入学

[自己紹介]
『日本がどこにあるのか分かりません』
今年1月から始まった、修士課程での初授業。
「一番遠い国から来た人は誰?」という教員の質問に、「Japan!Japan!」と答える、世界各国から集まった30人の生徒たち。「英国と日本の距離は?」と聞かれ、地球の裏側はブラジル…イギリスは…と地図を思い浮かべつつ答えたのが、上記、記念すべき授業中の初めての発言でした。

初めまして、ロンドンで生き恥さらしています。川島有沙です。
地元、愛知県の小中高大を卒業して、東京で看護師として働き、現在は修士学生として緩和ケアを学んでいます。

Twitter: @JapaneseNurse
Facebook: Arisa Sakamoto
メール: arichaaan123@gmail.com

 

[受験]
『私を推薦する文章を、書いてください。英語で。』
試験は、書類選考(推薦状、自己推薦文、履歴書、成績証明書)、英語の試験(IELTS)、Skype面接でした。(+臨床経験必須)
職場と卒業校から1通ずつ英文の推薦状を準備する必要がありましたが、申し訳ない気持ちから、看護管理者の上司には到底頼めませんでした。推薦状作成を依頼するということは、暗に退職を意味することにもなりますし、海外の大学院への進学は特に生意気な印象を与えてしまいかねないので、こっそりプリセプターの先輩にお願いしました。
英国修士ではIELTS Overall7.0 (各セクション最低6.5)を基準として設けている学校が多いです。不足しているスコアを、入学前の大学院準備コースで補完している人もいます。Skype面接では、「最近読んだ論文」や「今まで読んだ中で、一番印象に残っている論文」などの質問をされました。臨床にいたときは、上記の書類準備や英語対策がなかなか進まなかったので、退職後の3カ月で一気に準備を進めました。当修士課程に進学した日本人は、過去に1人(医師)のみだったので、情報収集にも時間がかかりました。
※詳しい対策方法については省略します。興味がおありでしたら、遠慮なくご連絡ください。

『なんで日本orアメリカじゃないの?』
海外大学院と言えば米国、のイメージもあるのでしょうか。私が英国を選んだ理由は、うどんと言えば香川、と同じ理由です。
King’s College Londonは、ナイチンゲールが世界で最初に設立した看護学校の母体で、現在所属しているシシリーソンダース研究所は、世界で最初に設立された緩和ケア専門の研究所です。臨床で働くなかで、緩和ケアを受けたくても受けられない人がいることは不平等だと感じ、がん患者さんだけでなく、すべての人に緩和ケアを提供するための研究を進めているこの研究所を選びました。当研究所の研究者の専門分野は多種多様で、医療者は多くなく、社会学・心理学・哲学・倫理学・疫学・経済学・地理学など、多分野の専門家が協同して緩和ケア研究を行っています。日本では、緩和ケアは医療・看護の視点のみで語られることが多く、分野横断的な学びが得られにくいような気がしています。緩和ケア提供の制度に対して政策面からアプローチしていきたい立場としては、英国の修士課程が魅力的に感じました。

『旦那さん、よく許したね?』
よく言われます。夫は日本にいますが、「一緒に住んでいなくても、人生をともに歩んでいる気はする」と言っているので、このような結婚の形もありだと思っています。義父母にも納得してもらえるように、なぜ英国なのかを説明して了承を得ました。育児となるとまた別なので、今後は自分のキャリアとの折り合いをつけていくことが課題です。

 

[入学]
『1年で350万円の学費』
英国の修士は1年のコースが一般的であり、学費がべらぼうに高いのも一般的です。特に非EU圏の学生には、UK・EU学生の2倍以上の学費を請求する大学もあります。とんでもない額ではありますが、奨学金は自分よりも経済的に厳しい人に譲ったほうがいいと思い、働きながら少しずつ貯めました。(裕福な家庭出身ではないので、節約と貯蓄だけは得意です)
入学前にしたことは、
・Twitterで研究所の職員と博士課程の学生をフォローして情報収集
・Youtubeで研究所が発信している動画を見て予習
・修士論文の研究計画書作成(日本より1年短いコースであるため) です。

 

[大学院生活]
『7割が英語ネイティブの医師たち』
授業は、統計・研究手法、症状管理、心のケア、政策に加えて選択授業2つで構成され、私は疫学と政策上級コースを選択しました。今年の学生は、医師、看護師、理学・作業療法、救急隊員で構成されています。高額な学費もあってか、多くがUKの医師です。非EUだとイスラエル・スーダン・シンガポール・マレーシア・カナダ・メキシコ・チリの学生がいますが、非ネイティブであっても、義務教育や医学教育は英語で受けていた人が多く、まともな海外経験すらないのは、私だけでした。

『圧倒的落ちこぼれ』
元々、留学や英国への憧れもなく、英語も中学2年生の時にすでに挫折していました。しかし、そんな私でもなんとか・・・なっていません。IELTS対策で得た、付け焼刃程度の知識では、全くもって敵いません。授業ではほぼ毎回グループワークやディスカッション、プレゼンがあり、議論についていくのに必死です。論文をその場で渡され、はい今読んでと言われ、周りが数分で読み終わって議論を始めようとする中、ままままだ読み終わっていませんすみません…状態です。ご想像の通り、圧倒的に落ちこぼれています。でも、いいんです。授業や議論の内容は非常におもしろく、好奇心をかき立てます。英語の壁は高いですが、だんだんと楽にはなっていきます。

『食費は月に5000円、家賃除く総支出は月に1万円以内に抑える』
無収入かつ家庭のための貯蓄は削れないので、生活費は厳密に管理しています。主食はオートミール、たんぱく質は豆と鰯缶で摂ります。交通費節約のため、5km程度の距離は走ります。ロンドンは住居費も高く、学生寮でも最低1か月約10万円かかります。学生寮では夜間のパーティー騒音にも困り果てましたので、今は治安の悪い安いエリアに引っ越して、グレナダ島出身の家主さんと住んでいます。女1人での夜の外出は少し怖いですが、フードを被ってポケットに手を突っ込んで、がに股歩きで強そうなふりをしています。

修士号取得後は、ホスピスで3年勤務し、英国の博士課程に進学予定です。現場が一番楽しいので、研究者になっても週に1回臨床で働いて、患者さんからエネルギーをいただけたらいいなと思っています。

 

[大学院を目指す看護師に一言]
日々の業務で忙しいなかで、大学院の情報収集をし、家庭の仕事もこなし、周りからやんややんや言われながらも準備を進めることは、簡単ではないと思います。
それでも、新たなキャリアを築こうと一歩踏み出す皆様を、心より応援しています。

このような貴重な機会をくださった廣瀬様に、心から感謝申し上げます。

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