岡山大学大学院医歯薬学研究科博士課程、2012年入学

[自己紹介]
〈名前〉
岩井直子

〈現在の所属〉
京都大学医学部附属病院 小児科(非常勤勤務)

〈略歴〉
2007年 岡山大学医学部保健学科 卒業、看護師及び保健師資格取得
2009年 岡山大学大学院保健学研究科博士前期課程(修士) 修了
2009年 岡山県に保健師として入庁
2012年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医学博士課程) 入学(10月入学)
2017年 同大学院 修了(医学博士号取得)
2018年 京都大学医学部附属病院 小児科 勤務

〈メールアドレス〉
n20120324@gmail.com

 

[受験]
〈その大学院を選んだ理由〉
子どもに関わる仕事や研究をしたいと考えていたため、大学卒業後すぐに看護学領域の修士課程(博士前期課程)に進学しました。修士課程の指導教官は小児科医師で、博士課程への進学を相談したところ医学博士課程への進学を提案されたことやアカデミアとして長い歴史がある医学博士課程で学ぶことに興味を持ったため、看護学博士課程ではなく、医学博士課程へ進学することとしました。
また修士課程の研究をとおして、患者さんを対象とした研究を行うためにはフィールドの獲得に大変苦労すると感じていたので、母校以外の大学を選ぶことは考えていませんでした。

〈試験内容〉
英文和訳(医療に関するトピックスで3題程度。辞書持ち込み可)
小論文
面接、口頭試問

〈受験の時に苦労したこと〉
私は社会人となって4年目で大学院を受験しましたが、4年目の4月にそれまで勤めていた保健所から県庁勤務に配置換えとなり、通常、保健所では保健師が上司であることが多いのですが、その時は直属の上司が総合職(事務)で、その上の上司は医師(公衆衛生医で同じ大学院の卒業生)であったため、大学院進学がそれほど珍しくないこともあり、反対されることは全くありませんでした。授業も夕方からや土日祝日に設定されており、業務に支障がなかったこともよかったのだと思います。
夫(医学)や父(工学)は大学卒業後に多くの学生が大学院へ進学する業界であるため、私の進学を全面的に応援してくれました。また妹が私よりも先に大学院(博士課程)に進学しており、進学の励みとなりました。
医学部の大学院だったので、知り合いもおらず、過去問は手に入りませんでした。そのため、仕事の合間に英語論文を読む等の試験対策を行いました。

 

[入学]
〈退職に至る経緯〉
上記に記載したとおり、職場の理解は得られていたため、退職することなく働きながら入学することができました。

〈入学前に準備したこと〉
大学院でやりたい研究等の論文を収集し、仕事の合間に読むなどして準備をしていました。

 

[大学院生活]
〈授業、実習の様子〉
授業は大きく分けて3つのカリキュラムがありました。
・研究方法論:医学部の各領域の先生による広く浅い「研究とは?」の授業
・主には成人疾患を対象にしたオムニバス形式の最近の治療・研究に関する授業
・ゼミ
医学博士課程は先生の数も多く、様々な分野があるため、時には専門的すぎて理解できない部分もありましたが、幅広い授業を受けられることはとても贅沢で楽しい時間でした。
ゼミは修士課程(博士前期課程)の指導教官(小児科医師)のところで受けており、医学博士課程(小児科)で受けることはありませんでした。そのため大学院生同士の横のつながりができなかったことは残念でした。

〈家庭との両立のコツ〉
入学した頃は夫と2人暮らしでしたので、講義や研究を大変と感じることはほとんどありませんでした。
しかし、大学院在学中に子どもを二人出産したこと、入学して2年半経った頃に夫の都合で京都に転居したことが大学院生活を続けていく上で大変な出来事で、何度も辞めることを考えました。
特に産前~出産~産後2か月は自分の体も本調子ではなく、新生児のお世話もあるため、研究を行う余裕は全くありませんでした。指導教官は小児科医でしたので、夫の転勤や出産に理解はありましたが、つわりで体調が優れない時期や産後で睡眠時間を十分に確保できない時期に、研究費をいただいた団体への報告の締め切りや論文のリバイスの締め切りが重なり、子どもを背負ってあやしながら、それらに取り組んだことはとにかく大変でしたが、今となってはいい思い出です。
看護は女性の多い領域のため、仕事との両立だけでなく、家庭との両立、とくに出産のタイミング、子育てなど悩むところは多いかと思いますが、卒業してみると「家庭も子どももなんとかなったなあ」という印象です。いろいろと先の不安はあるかと思いますが、進学してみたいという気持ちが少しでもある方は、ひとまず大学院に飛び込んでみるということもいいのかなとも感じています。

〈大学院にかかる費用と、そのやり繰りのコツ〉
働きながら大学院に通学していたので、学費は給与で支払っていました。
学費以外に必要な研究費(論文を取り寄せる費用、統計ソフト費用、論文執筆時の校正費用等)は大学から出してもらえることはほとんどなかったため、自分で獲得した研究費や自腹で捻出しました。
多くの大学院では、指導教官や所属する先生のテーマをもらって研究することが多いと思われますので、先生方が獲得した研究費を使用しながら研究を進めるという感じかと想像しますが、私の場合、医学(小児科)の大学院で看護研究になるようなテーマを持っておられる先生はおられなかったことから、先生方の研究費を使って研究をすることはできませんでした。今となっては入学時や研究を進めるうえで交渉してもよかったかなとも思うのですが、当時の私は目の前の研究や論文執筆、家庭のこと以外にエネルギーと時間を割く余裕がなかったため、仕方なかったとも感じています。

〈卒後の進路〉
現在は京都大学医学部附属病院の小児科で小児がんの臨床研究のサポートを行いながら、自分の研究を行う下地作りをしているところです。と書くととても聞こえはいいのですが、実際のところ下地作りは難航しており、研究を行う段階にはまだ程遠い状況です。
卒業後に大学に職を得て研究を続けることも考えましたが、自分には全く繋がりのない京都という土地で、患者さんを対象とした研究を行うには、これまでの経験から、病院の外側から研究のフィールドにアクセスすることは非常に難しいと思えました。なぜなら、いくら素晴らしい研究計画であったとしても、何者かわからない人間が突然やってきて、この病院の患者さんを対象に研究させてくださいといっても、怪しすぎて普通は研究させてくれないと思うからです。
また、私は研究を教育機関だけで行うものでなく、臨床で働かれている看護師さん(やそのほかの医療従事者の方々)と一緒に行いたいと考えています。その理由としては、患者さんを対象とした研究を行う場合には、患者さんに寄り添い、医療従事者に還元できるものでありたいと願っており、臨床に従事されている方々と一緒にすることでそれが叶うのではないかと考えるからです。一方で看護の業界は臨床、教育、研究の価値に偏りがあり、研究よりも臨床が大事であるという風潮がいまだ残っている部分があるように思います。どの領域も大切な要素であるため、臨床の看護師さんたちと研究をすることで、日常の業務の中で活動の成果を客観的な評価を含めてまとめたり、研究をする文化を醸成するお手伝いができれば嬉しいなと考えているところです。
大学院を卒業したにも関わらず、非常勤職員という待遇で不安定であることへの焦りや、現在は助教等といった職名がついているわけではないため、専門的な資格や学位を持っているにもかかわらず、一部のスタッフに事務職員のような扱いをされることへの苛立ちを感じる日もありますが、病院の中に入って、そこで働く医療従事者の方々と繋がりを築くことなくして、患者さんや臨床で働く医療従事者の皆さんに還元できる研究はできないのではないかと考えているので、もうしばらく頑張って下地作りに取り組んでみようと思っています。

 

[あなたの研究、実習の様子]
「小児がん経験者とその家族の治療後の不安と支援について」というテーマで研究を行いました。
小児がんの近年の5年寛解生存率は70〜80%に及んでいることから、小児がん経験者は増加傾向にあることや、大人のがんと異なり治療終了後からの人生の期間が長いという特徴があります。そのため、治療終了後も晩期合併症や再発などへの不安を感じており、長期間にわたる様々な負担を抱えて生活している小児がん経験者やその家族の不安やニーズを調査しました。
私が大学院へ入学した頃、幸運にも岡山大学では小児がん経験者の方を対象とした長期フォローアップ外来を立ち上げようとしているところで、外来の看護師さんや小児がんを専門とした医師と一緒にこの研究を進めることができたことはとても有意義でした。

 

[大学院を目指す看護師に一言]
大学院進学を決断することはとても勇気のいることだと思います。現在持っている資格で十分に仕事をすることはできますし、とりわけコメディカルにおいては、大学院へ進学する方は少数のため、理解されない部分も多いかもしれません。その中で大学院進学を検討されたり、決意されたあなたは本当に素晴らしいと思います。
ここまで長々と書いてきましたが、今回このシートを記入するうえで、私が大学院へ進学したきっかけを改めて考えてみました。理由はいろいろとあるのですが、根っこの部分は大学生の時に現在の夫に言われた言葉が最初のきっかけだったのではないかと思うのです。「看護はとても大切で価値のある仕事だ。でもなぜか周囲に理解されにくいし、ときたま馬鹿にされることもある。※悔しい。」などと夫にわめいていた際に、夫は冷静に「看護のアイデンティティって、何やと思う?結局、それが分かりにくい(示せていない)から、そうなって(※部分)いるんやろう。」と言われ、妙に納得し、説明できない自分が悔しかった覚えがあります。その時から私は「看護のアイデンティティ」を考えるとともに、看護職として何ができるかという問いを持ちながら、日々の業務に取り組んでいるかなと思います。傍から見れば絶賛迷走中な職歴ではありますが、何十年後かには看護に恩返しができる仕事ができていればいいなと感じています。
ですので何が言いたかったのかというと、院へ進学しようかどうか悩んでいる方、難しく考えず、大学院へ飛び込んでみましょうということです。また日々の業務に不満や不全感がある人も、ぜひ院進学を検討してほしいと思います。まだまだ未熟な私は、いまだに上記の質問に対する明快な答えは見つかっていませんが、悔しがるだけの大学生の時の自分よりはレベルアップしたように感じています。大学院進学は、新しいキャリアのスタート地点です。皆さんぜひ一緒に頑張りましょう!!

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