「看護に学歴は関係ない」とは言うけれど

「看護師に学歴は関係ない」

「大卒は使えない」 

 

臨床で働く看護師の方々なら、一度は耳にしたことがある台詞かもしれません。

本日は、看護という分野で働く際に、学歴があることでどのようなメリットがあるのかを私のうかがい知る範囲でお伝えしていこうと思います。

なお、この記事は「学歴がある看護師は優秀だ」などと学歴の有無と個人の優劣の関係を言わんとするようなものではないので、その点はご了承頂ければ幸いです。

あくまでも、学歴がある場合とない場合で、学習や就労環境にどのような差異が生まれるかということを、できる限り冷静にお伝えしたいということが今回のブログの趣旨になります。

 

 

ここで、学歴という言葉を二つに分けて使わせて頂きます。

 


専門学校か大学か

一つ目は、専門学校か大学かという“修学形態の違い”です。

看護師になるのであれば、大学よりも即戦力教育が受けられる専門学校の方が良いのではないか?

私立大学の学費を考えれば、専門学校は比較的安く、さらに3年で卒業できる。

そういった考え方もあると思いますが、“修学形態の違い”という点に関して言えば、私は「学歴は絶対にあった方が良い」というのが持論です。

 


給与が高い

最初の理由はシンプルで、専門卒よりも大卒の方が、給料が高いからです。

病院のホームページをご覧になって頂けばお分かりになると思いますが、新人看護師の給与形態の項目が、「3年制専門学校卒」と「4年制大学卒」の二つに分かれてはいませんか?額を見て頂くと、大卒の月給が専門卒よりも1万~1万5千円程度高くなっているはずです。仮に1万円の差があるとすると、

1年で1万×12カ月で12万円の差が、

10年では120万円の差が生まれることになります(実際は、専門卒より大卒の方が年々の給与アップ率が高いという病院もありますが、ここでは単純化のためにその影響は無視しています)。

 


キャリアが伸ばしやすい

また、都内の有名大学病院になると「大卒しかとらない」という病院もあります。

管理職になる際に、看護においても修士号を求める病院もあり、その面でも大卒は専門卒に比べて大学院にアクセスしやすいというメリットがあります(修士課程入学のためには、一般的には大卒者に与えられる学士号が条件となりますが、看護の場合は学士号を持っていなくても、「学士相当」と見なされることで修士課程入学が可能になるので、必ずしも専門卒の方が修士課程に入学できないというわけではありません)。

 

看護師+αの資格が取れる

殆どの専門卒が3年生で看護師資格のみの取得が可能であるのに対して、大学の中には4年間で看護師資格に加えて看護師の上位資格である保健師、助産師の資格を取得できるところもあります(近年はこれらの上位資格が大学院課程化しつつあり、4年で取れる大学は減ってきているようですが)。専門卒の方がこれらの資格を取得しようとすると、一度卒業した後に再びそれぞれの資格の養成校に入学するという手続きが必要になるのですが、大学の場合はそのままカリキュラムの延長線上で取得することができます(助産師の場合は、実習に人数制限がある都合上、各大学の成績上位~名などと制限が設けられていることが多く、それほど簡単ではないようですが)。私も大学在学中に保健師になるつもりは全くなかったのですが、カリキュラム上取れることになっていたので、「まぁ、貰えるというなら貰っておこう」という不遜な心積もりでしたが保健師資格を取得しました。この保健師資格というのがかなりお得な資格で、この資格があることによって、働ける場所が病院だけでなくグッと広がります。行政保健師となれば自治体で働くことができ、また産業保健師となれば企業の社員として働くことができます。

 

このように、専門卒に比べて大卒は給与、キャリア、取得できる資格の種類という様々な面で恵まれており、たった1年の就学期間の違いで環境にこれだけの差が生まれるのですから、私は“修学形態の違い”という点からは学歴は絶対にあった方が良いと考えます。

 

 

より偏差値が高い大学に行くべきか

次に、「同じ大学卒ではあるが、より偏差値が高い」、つまり高偏差値という意味での学歴についてです。

この場合は、「看護師になるうえで、偏差値50の大学よりも偏差値70の大学の方が良いのか」というような問いが立てられます。

これに関しての私の意見は「学歴はあってもなくてもいいけど、あるに越したことはない」というものです。

いわゆる高偏差値大学に行くことのメリットとしては下記のものが考えられます。

 

学費面での支援が得やすい

偏差値が高い大学は、予算規模の大きい大学が多いため、学費免除や入学金免除などの学費面での補助が受けられやすいように感じます。

 

外部奨学金が得やすい

こちらも一つ前の理由と似ていますが、高偏差値の大学ほど外部、つまり民間の奨学金を獲得しやすくなります。民間奨学金のホームページをご覧頂けばお分かり頂けると思いますが、その中には一部の大学の学生にしか奨学金への応募権を与えていないものがあり、それに該当しない場合にはそもそも勝負の土台にすら上がれなくなってしまいます。

 

看護学以外の授業が充実している

特に国立系の総合大学であれば、自分が所属している学部以外の授業もフリーで受けられる他学部聴講という制度が存在します。これには例えば英語、フランス語、中国語などの語学や、プログラミングやデザインなどの工学系の授業、死生学、映画や小説などの芸術系の授業などと様々に存在しており、看護学を深めるだけでなく、自分の教養を磨くための贅沢な機会となります。

 

将来社会で活躍する友人たちと繋がることができる

やや打算的に聞こえるかもしれませんが、高偏差値の大学の学生たちは大企業の要職や国家官僚、弁護士や医師などの高度資格職、NPO代表や起業家など、社会の様々な分野で活躍していく者たちが多く、生涯互いに切磋琢磨しあえる仲になると思います。

 

看護師以外の職を見つけやすい

看護学部に進学後に、やはり看護師ではなく一般企業で就職したくなったとします。この際にも、学歴が高い大学の方がやはり就職の間口を広げることができます。例えば、企業が開催する就活イベントですが、この中には一部の大学の学生のみにしか参加を許可しないタイプのものがあります。また、私自身は企業就職をしたことがないので分かりませんが、一般企業で人事をしている友人たちに聞きますと、やはりエントリーシートの段階で、学歴で振り分けてしまう、という事実もあるようです。

 

 

まとめ

さて、今回は看護師と学歴の高低というテーマで執筆して参りました。

繰り返しになりますが、今回の記事は「学歴が高い看護師の方が優秀」などと詮なき事を言うためのものではなく、あくまでも「学歴の高低によってもたらされる環境の違い」に言及したものになります

当然ながら、学歴が高くても臨床現場に馴染めない看護師さんもいれば、学歴が低くても新人時代から颯爽と活躍する看護師さんもいらっしゃいます。日本において学歴は入試というシステムによって決定されていますが、これにより測定可能な指標は個人の能力のほんの一側面でしかなく、それに依存して個人を全人的に判断するような態度には私は違和感があります。

しかしながら、学歴の高低によって手に入れることのできる環境に差があるということは動かしがたい事実だと私は感じます。その環境が必要だと思えばいわゆる“高い学歴”を獲得しにいけばいいし、不要なのであればその分のエネルギーを別のことに充てるというのも当然ありうる選択肢でしょう。

また、仮に「大学に行きたかったけど、受験に失敗して専門学校にした」、「大学を卒業してから環境の重要性に気づいた」という方がいたとしても、いつでも学びなおしは可能のはずです。専門学校を卒業して新たに大学に編入する方もいれば、大学院で自分が望んだ場所に入学することも勿論可能でしょう。現代なら、オンライン大学院という方法で海外の修士号を取得するという方法もあります。

 

私自身も、学びの可能性を閉じずにいられる環境に身をおいていたいものだと、ひしひしと感じております。

広告