Modern Epidemiology Chap 2 “Causation and Causal Inference” part 2

時間が空いてしまいましたが、Modern EpiのChapter 2の後半をやっていきたいと思います。

 

Part 1はこちらから

 

今回は、「原因XとアウトカムYの関連の強さ」が何によって決まるかということについて。

Component cause modelが再び登場しますので、「そんなの知らないよ」という方は上のリンクからPart 1をお読みになって頂くと良いかと思います。

 

さて、疾病Zが発生するためのcomponent cause modelが以下の3種類だったとしましょう。

Figure 1. Three sufficient cause models

 

復習になりますが、これらはSufficient cause modelと呼ばれ、図のモデルのどれか一つをU、A、Bが満たした際に、疾病Zが発生します。Uは未だに未知の原因です。

 

 

さて、このうちcomponent cause Eが「強い影響を持つ、もしくは弱い影響を持つ」とは何によって決まるのかということをこれから考えて行こうと思います。

そのため、以下のような仮想的な2つのポピュレーションを考えてみましょう。

なお、説明を簡単にするために、未知のCausal componentであるUはいかなる場合でも必ず満たされていると仮定します(つまり、U以外のCausal componentであるA、B、Eが条件を満たせば、疾病Zが発生するということです)。

Table 1

Exposure:それぞれのCausal componentが満たされているか

Sufficient Cause Completed:満たされているSufficient Cause Model

Risk:疾病Zが発生するか(1が発生)

Frequency of Exposure Pattern:それぞれのExposureの人口

 

 

さらにこの時、Causal componentであるAが測定されていないと仮定したうえで、BおよびEが変化すると、どのように疾病の発生割合が変化するかと言うことをPopulation 1および2においてそれぞれ考えます。

 

まずはPopulation 1から。

Table 2. Populaton 1

Table 1を見て頂くと分かると思いますが、B = 1, E = 1を満たす行はA = 1とA = 0の時で2行ありますね。Table 2のTotalの部分はこの2行の総人口であり(1800 + 200 = 2000)、Casesはそのうち疾病Zを発症する人、つまり Risk = 1となっている人(1800 + 200 = 2000)です。IPはIncidence Proportionの約で、疾病の発生割合ですので、疾病発生者/総人口で求められ、この場合は2000/2000 = 1.00となります。

 

さて、これでようやく「Component cause Eの影響の強さ」を測定するための準備が整いました。

Eの影響の強さを見たいので、ここではBを固定して考えていきましょう。
B = 1で固定した場合は(Table 2の列の内の左2つですね)、IPはE = 1の時に1.00、E = 0の時に0.10となっております。つまり、Eが”ある”状態のときは、””ない”状態の時よりも 1.00 – 0.10 = 0.90分だけ疾病を発症した割合であるIPが大きいということになります。

今度は反対にBの影響の強さを見たいとしましょう。同じように、Eを固定して考えていきます。
E = 1で固定した場合は、IPはB = 1の時に1.00、B = 0の時に0.90となっています。つまり、Bが”ある”状態の時は、”ない”状態の時よりも1.00 – 0.90 = 0.10分だけ疾病を発症した割合であるIPが大きいということになります。

 

上記をまとめますと、

Component cause Eがあれば疾病発生割合は0.90上昇し、
Component cause Bがあれば疾病発生割合は0.10上昇する、

ということになります。

 

この場合は、EとBはどちらも疾病Zの原因(の一部)ではあるけれど、Eの方が影響が強いと言えそうです。

 

 

さて、次はPopulation 2について考えて行きましょう。

Table 3

 

先程と同じ方法でComponent cause EとBの影響の強さを見ていきますと

Component cause Eがあれば疾病発生割合は0.10上昇し、
Component cause Bがあれば疾病発生割合は0.90上昇する、

ということになります。

 

先程のPopulation 1の時とはComponent cause EとBの影響の強さが逆転しているということがお分かり頂けるかと思います。

 

 

EもBも固定された単一の原因でありながら、なぜPopulationが変わるとその影響の強さが変わってしまうのでしょうか(喫煙が肺癌発生に与える影響の強さが、集団間で変わってしまうということです)?

Sufficient cause modelを考えた際に、Eに着目すると、Eと併せて疾病Zの発症に必要なComponent causeをCausal complementと呼びます(今回はA = 0, B = 1, Uのことです)。

今回、Population 1と2でComponent cause EとBの影響の強さが逆転してしまったのは、EとBの影響の強さが、EとBそのものではなく、Causal complementの分布に影響されるからです*。
*なお、今回は影響の強さを疾病Zの発症割合の差で表していますが、これを比で表す場合にはComponent cause EとBの影響の強さにCausal complement以外の条件が関わってきます。私のブログでは割愛しますので、Modern Epidemiologyの原著をあたってください(pp.12)。

 

ちょっと不思議な気がしますよね。

肺癌発生における喫煙の影響の強さが、喫煙と共に肺癌発症に必要なComponent cause EとBの分布によって決定されるというのですから。つまるところ、喫煙そのものには肺癌発生に対する影響力の強さも弱さもないということです(Causal complementとの組み合わせによってはじめて喫煙の影響力の強弱が決まる)。

また、Causal complementの分布は時代や場所によっても変わるはずです。これは、喫煙が肺癌発生にもたらす影響の強さは時代や場所が変われば変わりうるということを意味しています。

 

 

さて、以上でModern Epi Chapter 2の後半が終了となります。
次回はChapter 3の”Measures of Occurrence”で、疫学で使用される指標たちを紹介していきます。

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