医学論文の読み書きをするうえで参考にした書籍

私は現在、東京大学公衆衛生大学院の臨床疫学・経済学教室で論文の書き方を勉強しています。教授とチューターさんのご指導のおかげで、現在は修士課程で5本目の英語論文を執筆中です。まだまだ勉強せねばならないことばかりで焦りますが、そんな私が大学院に入り、論文の読み書きをするうえで参考になった書籍を紹介します。

 

 

 

疫学・統計学編

医学論文を読むうえで、疫学・統計学の知識は必須です。

専門家による授業を受けるのが一番ですが、看護系大学院ですと疫学・統計学の専門家が学内にいないということもあるかもしれません。そんな時、独学でもわかりやすく疫学・統計学の参考書があると助かりますね。

 

 

 

わかりやすいEBNと栄養疫学

東京大学社会予防疫学の佐々木教授による一冊です。

「疫学って何?」という人はまずはこれ。

初めて疫学を学ぶ方にはこれ以上の書籍はない、と言っても過言ではないほどの名著です。佐々木教授の授業は東大SPH(公衆衛生大学院)でも名物講義となっており、毎回講義室が溢れかえるほどの人気ぶり。書籍にもそのエセンスが見事に凝縮されており、疫学の基礎がグッとくる言い回しと、美しい図や表で表現されます。

最も美しい疫学の初学者向け参考書だと思います。

  

  

  

  

医学研究のデザイン 研究の質を高める疫学的アプローチ 第4版

京都大学の木原先生による有名な翻訳本シリーズですね。疫学系の研究室であれば必ず一冊はある書籍なのではないでしょうか。研究デザインや、疫学研究を行う上で抑えるべき知識ががっつり書かれており、佐々木教授の「わかりやすいEBNと栄養疫学」で疫学の全体をさらった後に読み始めることがお勧めです。

 

   

  

   

ロスマンの疫学

先ほどの「わかりやすいEBNと栄養疫学」が初学者向けの参考書だとすると、こちらは既修者向けの参考書。筆者のロスマンは疫学の世界では知らない人はいないというほどの有名な疫学者です。

疫学の基礎を、より突っ込んだレベルで解説しており、ある程度論文の読み書きをして疫学に慣れた後に読むと、「なるほど、あれはそういうことだったのか!」と目からうろこが落ちること間違いなし。

反対に、初学者がいきなりここから始めてしまうと、「あれはそういうこと」の「あれ」の部分がないため、もやっとしてしまうかもしれません。一本は疫学論文を書かれた後に読むと、より楽しめること間違いなし。

 

 

 

 

Modern Epidemiology

さきほどの「ロスマンの疫学」と同じロスマン先生が筆頭著者の一人として執筆している疫学書。世界中で読まれている参考書ですが、難解な言い回しや数式があちこちに散りばめられており、よほど数学が得意でない限りは一人で読むと殆どの人がくじけてしまうと思われます。

私も、臨床医や国内外のMPH生、Public Healthの専門家たちとともに毎週末に本書の輪読会を開催しており、お互いに助け合うことで何とか読み進められております。それでも全てを理解することはできず(私の理解力では2~3割程度)、何度も読み直す必要性を感じています。

しかし、疫学を根っこの根っこから説明してくれているため、「ロスマンの疫学」と同様に「なるほど、あれはそういうことだったのか」というアハ体験が気持ちよく、難解ではありますが読むのを止められない中毒性のようなものも感じます。繰り返しますが、一人で読むと消化不良に陥ること間違いなしなので、できれば疫学・統計の専門家が一人はチームに加わってくださっている形式で輪読会を行うことをお勧めします。

 

 

 

 

統計学がわかるシリーズ

みんな大好きハンバーガー統計とアイスクリーム統計です。

ひっじょーに平易な言い回しとかわいいイラストで、統計の基礎の基礎の基礎の基礎が解説されています。統計学はいきなり本腰を入れて専門書を読み解こうとしても心が折れること間違いなしなので、まずはこうした平易な本から入るのがおすすめ。

 

  

  

  

  

医学的研究のための多変量解析

先ほどあげた「医学研究のデザイン 研究の質を高める疫学的アプローチ」と同じ木原先生の翻訳本シリーズです。

多変量解析は疫学研究で最も使われる解析手法の一つだと思いますが、本書は多変量解析のみに絞って、比較的シンプルな解説を展開しています。

多変量解析を使われる方はまず読んでおかれると、どのような点に気を付けて解析を行えば良いかがスッと理解できるかと思われます。

  

 

 

 

データ解析のための統計モデリング入門: 一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC

統計学についてもう一歩進んで勉強したいという方向けの書籍。久保先生は独学で統計を学ばれたという先生で、統計学者の視点から「統計モデリングとは何か」ということを親しみやすい表現で伝えてくださいます。とはいえ、「統計学がわかるシリーズ」とは打って変わってこちらでは数式もばんばん出てきますので、読み解くためにはある程度は数学の基礎知識が必要になります。

基本的ないくつかの統計モデルで必要な仮定が何か、そして統計モデルを設定するうえで決めなければいけないことは何か、といったことが解説されており、これまで「なんとなく」行っていた統計モデリングを着実に前に進めてくれること間違いなしの一冊。

 

 

 

 

 

 

論文の読み方・書き方

ここまでは研究を行うために必要な知識である疫学・統計学を学ぶための参考書を紹介してきました。しかし、疫学・統計学の知識をもって研究を行ったところで、それを論文という媒体に落とし込まなければ、何もしなかったことと同じになって今います。論文の書き方を学ぶには、優れた研究者から直接指導を受けることが圧倒的に効果的な学び方だと思いますが、そういった環境が身近にないという方もいらっしゃると思います。

ですのでここからは、論文の読み方・書き方を学ぶうえでお勧めの参考書を紹介していきます。読むことで、優れた研究者が論文を書く上で考えていることをトレースできるような名著を選びました。

 

 

 

必ずアクセプトされる医学英語論文

医学論文の書き方本は巷には沢山ありますが、最もお勧めなのがこちらの一冊。著者は東京大学臨床疫学・経済学の康永教授であり、医療データベース研究の第一人者です。著者自身が400本以上の論文を発表してきた経験から、「医学英語論文を書く型」が驚くほどシンプルに解説されます。

「論文のどこに、何を、どのように書くべきか」ということを知るうえでこれ以上の本はないのではないかと個人的には思っております。

必読書です。

 

 

 

 

国際誌にアクセプトされる医学論文 一流査読者調査に基づく「再現性のある研究」時代の論文ガイド 第2版

再び木原先生による翻訳本シリーズ。

こちらの特徴は、エディターといって論文を医学雑誌に掲載するかどうかを判断する立場にある方(つまり、論文の質を判断する立場にある方)からの実際のコメントをふんだんに盛り込んでいる点です。

医学雑誌への掲載を決めるうえで、どのような点を重視し、どのようなことをしてしまうと「質が低い論文」と見なされるのかどうかが率直に書かれていますので、「なるほどなぁ、読む側からしたらこれはNGなんだな、こういうことを書いて欲しいんだな」と、納得させてくれる一冊です。

  

 

 

 

 

終わりに

いかがでしたでしょうか?

著名な本ばかりをご紹介したので、「もう知ってるよ」という本も多かったのではないでしょうか?

疫学・統計学や論文の書き方本は数多く出版されているので、実際に本屋さんに行ってご自分の目で確かめて、「これはいい!」とお気に入り本を見つけ出すのが良いかと思います。それもまた勉強の楽しみですよね。反対に、皆さんから「この本もいいよ!」という本があればぜひ教えてくださいませ。私も読んでみたいと思います。

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