ドイツの看護師における男女間の給与格差 pooled cross sectional study

”エビデンス”シリーズでは看護系の論文を紹介しています。

有料論文においては、無料で閲覧できる範囲(Abstract)の紹介に留めております。そのため、このブログを読んでも研究の全貌を知ることはできません。Abstractのみを読んで研究の結果を解釈することはできませんので、ご興味のある研究があった際には、ぜひ下記のリンクから論文が掲載されたサイトを訪問することをお勧めいたします(有料論文を見るためには契約が必要です)。

 

 

論文の概要

論文

The male-female earnings gap for nurses in German: A pooled cross-sectional study of the years 2006 and 2012

Int J Nurs Stud. 2019 Jan;89:125-131. doi: 10.1016/j.ijnurstu.2017.07.006. Epub 2017 Jul 14.

 

Research question

ドイツの看護師労働市場においては男女間の給与格差は存在するか?

 

PICO

P:ドイツの現役看護師828人

E:男性看護師

C:女性看護師

O:月収

 

 

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Abstract

Introduction

看護師はあらゆる国において、女性にとって最大規模を占める専門職の一つである。エビデンスによればアメリカの看護師においては男女間の給与格差が存在することが明らかになっており、これはジェンダー格差を拡大させているかもしれない。男女間の給与格差を捉えるうえで、男女間の仕事に対するモチベーションや能力の差が原因としてあると長い間考えられてきた。しかし、これらの因子は測定が困難である。ドイツにおいては看護師になる経路が限られており、また職の流動性も低いため、ドイツの看護師は働くモチベーションや能力がアメリカと比較してより均質化しやすい。本研究の目的は、ドイツの看護師労働市場における男女間の給与格差を調べることである。 

 

Method

本研究は2006-2012年に収集されたデータを用いたpooled cross-section studyである。我々が使用したデータは代表性のある現役の看護師828名のものである。多変量線形回帰分析を行い、男女それぞれの看護師の月収(log化)を測定した。full modelにおいては労働時間や教育歴、看護師経験年数、労働市場での就労経験年数、労働していなかったキャリア、その職場での就労年数、業務上の責任などの労働因子に加えて、背景因子、人的資本、地理的因子を調整している。さらにfollow-up analysisを行い、給与格差に対する他の仮説を検証した。現在就労していない看護師の給与を調査し、また夜勤や就労時間に差が出る形で潜在的なモチベーションに差がないかどうかを調査した。

 

Result

未調整の解析においては、フルタイムの男性看護師の月収は女性看護師のそれよりも30%(700ユーロ)高かった。調整済み解析では9.3%(260ユーロ)高かった。Follow-up analysisの結果は、ドイツの労働市場においては男性は女性よりも看護師以外の良い職種を見つけやすいという可能性を示唆しており、一方で業務上のモチベーションにおいては男女間の差は見いだされなかった。

 

 

感想

非常に多くの変数が調整されているが、これらの変数全てが労働関係の単一のsurveyから取得されているということに驚いた(質問数の多さはその精度と等価交換であるため、必ずしも質問数が多ければよいというわけではないが)。

詳しくは生物統計家に尋ねたいが、本研究の解析には疑問点がある。解析は「男女という変数の影響のみの差を見るために、それ以外の因子を調整する」というモチベーションでデザインされている。この際、”それ以外の因子”として含まれるべきものは交絡因子であり、中間因子を解析に含んでしまった場合は、男女という変数の影響を過小評価することになる(ここ自信ないです)。しかしながら、本解析においては幾つかの中間因子が誤って解析に含まれてしまっているのではないか?

例えば、教育年数である。教育年数が男性か女性かという因子に影響を与えることはあり得ず、一般的には「男性の方がより最終学歴が高くなりやすい」という関連が見られると思う。つまり、

性別 → 教育歴 → 看護職の給与

という関連が推測され、この場合の教育歴は性別と看護職の給与の中間因子となる。よって、教育歴を変数として投入することが誤りとなる。そもそも、給与をアウトカムとするならば、性別が様々な中間因子を経てアウトカムに影響していると考えられるため、その他の因子を調整して、純粋に性別の影響を見ようとしたところで、それはいったいなにを見ようとしていることになるのか、私にはわからない。男性性、女性性というものが、何の因子も介さずに給与に影響するということはまずありえないだろう。

素人考えで恐縮だが、例えば社会的学分野で使用されるSEMを用いて、性別がどのような経路を経て男女間の給与格差に影響しているかどうかを調査したほうが、よりpracticalな統計モデルになりはしないか。

 

 

 

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