プライマリーケア領域におけるナースプラクティショナーと総合診療医の費用対効果比較 ランダム化比較試験

”エビデンス”シリーズでは看護系の論文を紹介しています。

有料論文においては、無料で閲覧できる範囲(Abstract)の紹介に留めております。そのため、このブログを読んでも研究の全貌を知ることはできません。Abstractのみを読んで研究の結果を解釈することはできませんので、ご興味のある研究があった際には、ぜひ下記のリンクから論文が掲載されたサイトを訪問することをお勧めいたします(有料論文を見るためには契約が必要です)。

 

 

論文の概要

論文

Randomised controlled trial comparing cost effectiveness of general practitioners and nurse practitioners in primary care

BMJ. 2000 Apr 15;320(7241):1048-53.

 

Research question

プライマリーケア領域の診療において、ナースプラクティショナーは総合診療医と比較して費用対効果が良いか?

 

PICO

P:EnglandおよびWalesの20のクリニックを訪れた1716人の患者

I:ナースプラクティショナーの診察

C:総合診療医の診察

O:診療プロセス(診療時間、検査、処方、紹介)、患者満足、健康状態、2週間後のクリニック再訪問、コスト

 

 

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Abstraction

Introduction

プライマリーケア領域の診療において、ナースプラクティショナーと総合診療医の費用対効果を比較する。

 

Method

多施設ランダム化比較試験を行った。EnglandおよびWalesの20のクリニックを訪れた1716人の患者を対象とし、うち1316人が参加に同意した。1303人が実際にクリニックを訪れている。最終的にデータが解析に利用可能であったのは1292人であった(651人が総合診療医の診療、641人がナースプラクティショナーの診療を受けた)。

アウトカムは診療プロセス(診療時間、検査、処方、紹介)、患者満足、健康状態、2週間後のクリニック再訪問、コストである。

 

Method

ナースプラクティショナーの診療は総合診療医のそれより有意に長かった(11.57 vs 7.28分, 調整後差 4.20, 95%CI 2.98-5.41)。ナースプラクティショナーはより多くの検査を実施し(8.7% vs 5.6%, OR 1.66, 95%CI 1.04-2.66)、より頻繁に患者に再診を要求した(37.2% vs 24.8%, OR 1.93, 95%CI 1.36-2.73)。処方パターンやヘルスアウトカムには有意差はなかった。患者はナースプラクティショナーの診療により高い満足度を示した(平均スコア 4.40 vs 4.24, 調整後差 0.18, 95%CI 0.092-0.257)。診療時間を調整した後も、この差は残存していた。ヘルスサービスコストには有意差はなかった(ナースプラクティショナー £18.11 vs 総合診療医 £20.70, 調整後差 £2.33, 95%CI -£1.62-£6.28)。

 

Conclusion

ナースプラクティショナーと総合診療医のヘルスサービスコストは同様であった。ナースプラクティショナーが再診率を下げ、診療時間を短くし、かつ本研究で示したベネフィットを維持し続けられるのであれば、ナースプラクティショナーは総合診療医よりも費用対効果に優れるであろう。

 

 

感想

ナースプラクティショナーの費用対効果に着目した研究は、日本ではNP教育が始動した今でこそまさに求められているであろう(UKのNPと日本のそれでは教育制度や法的権限が大きく異なるが)。本研究が行われたのは2000年であり、日本が立っている看護行政のステージとは大きな隔たりがあることを感じる。

ナースプラクティショナーと医師の比較をした研究は複数あるが、本研究が珍しかったのは患者満足度を調査していた点であろうか。本研究は診療のプロセスをアウトカムとしており、治癒までの時間や死亡率などのハードなアウトカムの比較ではない点に限界がある。また、本研究では各患者ごとに1回の診療の結果を比較しているため、複数回の診療結果を長期間追跡するタイプの研究よりは精度が落ちると考えられる。比較が有効なアウトカムとしては、例えば処方や診断内容の正確性などが考えられるが、本研究においてはそれらは比較されていない。処方内容の比較は行われているが、本研究においてはナースプラクティショナーの処方は総合診療医のサインを要しており、つまり実質的には「ナースプラクティショナーが処方を判断した後に、総合診療医が許可を出した処方」である点に注意が必要である。

 

ナースプラクティショナーの処方や診断の正確性を評価するRCTであれば、法制度的には日本でも可能であろうから*、ナースプラクティショナーの法的権限拡大のためにもぜひ行われるべきだと考える。

*たとえば、まずナースプラクティショナーと総合診療医がそれぞれ同一の患者に対して処方内容、診断を検討し、その正否をベテランの総合診療医が判断するなどは可能であろう。

 

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