看護師の配置数と患者死亡率の関連

 

 

 

”エビデンス”シリーズでは看護系の論文を紹介しています。

有料論文においては、無料で閲覧できる範囲(Abstract)の紹介に留めております。そのため、このブログを読んでも研究の全貌を知ることはできません。Abstractのみを読んで研究の結果を解釈することはできませんので、ご興味のある研究があった際には、ぜひ下記のリンクから論文が掲載されたサイトを訪問することをお勧めいたします(有料論文を見るためには契約が必要です)。

 

 

論文の概要

論文

Nurse staffing and inpatient hospital mortality

N Engl J Med. 2011 Mar 17;364(11):1037-45. doi: 10.1056/NEJMsa1001025.

 

Research question

十分に交絡因子を調整したのちも、シフト単位でより多い看護師数を配置することは患者死亡率の低下に関連しているか?

 

PECO

P:large tertiary academic medical centerにデータが登録された197,961件の入院

E:多い看護師配置数

C:少ない看護師配置数

O:入院30日以内死亡率

 

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Abstract

Introduction

病院レベルの管理データを対象とした横断研究からは、少ない看護師配置数と患者死亡率の増加との間には関連があることが報告されてきた。しかしながら、それらの研究は配置数と個々の患者が暴露したケアとの間の直接的な関連を示していないこと、そして十分な統計学的調整を加えていないことにより、批判を受けてきた。

 

Method

large tertiary academic medical centerのデータを使用し、43の病棟からの197,961件の入院(8時間シフト換算では176,696シフト)を対象として、患者死亡率と看護師配置数(実際の看護師配置数が目標となる看護師配置数に届かなかったシフト数)との関連を調査した。また、患者死亡率と頻回のpatient turnover (入院、病棟移動、退院などのイベントの総称)との関連も調査している。統計手法としては、患者および病棟レベルの変数調整を行ったうえで、Cox proportional-hazards modelを使用した。

 

Results

診断群分類別に類似した患者の死亡率を求めた結果、本研究におけるそれは期待値の61%であった。患者死亡率と看護師配置数(実際の看護師配置数が目標となる看護師配置数に届かなかったシフト数)との間には有意な関連があった(HR 1.02, 95%CI 1.01-1.03, P<0.001)。患者死亡率と頻回のpatient turnover (入院、病棟移動、退院などのイベントの総称)との間には有意な関連があった(HR 1.04, 95%CI 1.02-1.06, P<0.001)。

 

Conclusion

本後ろ向き観察研究において、目標とされる配置数よりも少ない看護師配置は患者死亡率の増加と関連していた。これにより、患者の看護ニーズに合わせた看護師配置をする必要性が強調される。

 

 

感想

看護に関する論文が世界5大医学誌の一つであるNEJMに掲載された珍しい事例。著者のDr NeedlemanはUCLAのDepartment of Health Policy and ManagementのChairmanであり、おそらくPenn NursingのDr Aikenと並んで世界で最も著名な看護研究者だと思われる。私もいつか会ってみたい(PhDに進学するなら最も師事したい教授の一人である)。

看護師配置数と患者アウトカムに関する研究は本研究以前にも多く行われていたが、本研究は各シフトレベルでの配置数を測定していた点に新規性がある。同様の研究のほとんどは、病棟レベルの看護師配置数を説明変数として使用しており、本研究のイントロでも述べられている通り、これには「病院全体での看護師数しかわからないため、実際に各病棟の患者が何人の看護師によるケアを受けているかどうか」という実態が分からず、看護師配置をかなりラフに扱ってしまっているという問題点があった。

看護師の受け持ち患者数が増えるほど、各患者に使えるケアの時間が減るため、急変の兆候を察知、もしくは急変時に迅速に発見するということが難しくなる。入院、転棟、退院というイベントは看護業務の中でも特に負担が大きいものであり、よって「看護師配置数が少なく、またpatient turnoverが多いほど、患者死亡率が上がる」という本研究の結果は看護師の直観と一致したものであろう。

本研究に関心を持った方は、Dr Aikenが類似の研究を複数行っているため、そちらも一読することをお勧めする。とくに有名なのは、学士保有の看護師数と患者死亡率を調査した1本。

 

 

 

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